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企業の健診担当者必見!産業医監修~健康診断実施後の事後措置でおさえるべきポイント~

絹川 千尋
監修者

日本産業衛生学会産業衛生専門医/日本医師会認定産業医/社会医学系指導

日本産業衛生学会指導医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医、メンタルヘルス法務主任者専属として勤務。その後中小企業を対象とした産業医として独立し、株式会社産業医システムズを設立。現在は統括産業医として、産業医に指導をしながら、チーム制による産業保健活動を行う。

皆さんもご存知の通り、労働安全衛生法第66条に基づき、会社は従業員に対して、1年に1回の医師による健康診断を実施しなければなりません。また、従業員は会社が行う健康診断を受けなければなりません。さらに、この健康診断は『実施して終わり』という訳ではなく、むしろ健康診断を受けた後の対応、つまり『健康診断の事後措置』がより重要です。それでは、健康診断の事後措置では何に気を付けて、どのようなことをしたら良いのでしょうか。

読者の皆さまのなかには、『なんとなく理解はしていても、会社として、実際何をどこまでやれば良いのか分からない』と疑問に感じていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

本記事では健康診断実施後の事後措置に関する基本的な考え方から応用編までを網羅してご説明しますので、健康診断実施後の対応にぜひお役立てください。

産業医をお探しの方は産業医システムズへ

産業医システムズでは、健康診断後の事後措置対応について、経験が豊富な産業医が複数在籍しています。担当の産業医に加えて、産業医を指導できる資格をもつ統括産業医や保健師が、チームとなって健康診断実施後の事後措置対応をサポートいたしますので、何をどうしたら良いのか分からないというご担当者様や、産業医をお探しの企業様は、お気軽にお問合せください。

また、常時雇用する従業員が50人未満の小規模の企業様はスポットでの対応も可能ですので、まずはご相談ください。

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健康診断事後措置の6つのステップ

そもそも会社による健康診断は何のために実施するのでしょうか。簡単にまとめると、『従業員が安全で健康に働ける健康状態かどうかを確認する』ために行います。

これは事後措置を行う上での基本的な考え方ですので、このことを念頭に置きながら記事をお読みください。

健康診断実施後における事後措置の具体的な内容は、主に以下の6つのステップから成り立っています。

① 健康診断の結果を受領する

② 会社が従業員に対し、健康診断の結果を通知する

③ 従業員の健康診断の結果について、産業医等の医師からの意見を聴取する

④ 医師から必要だと判断された従業員に対して、医療機関への受診勧奨等を行う

⑤ 指導区分の決定・就業上の措置を行う

⑥ 労働基準監督署に健康診断を実施した旨を報告する

この6つのステップに着目しながら、会社として何をするべきなのか、一つひとつご説明します。

①健康診断の結果を受領する

会社が実施する健康診断については会社が実施者であるため、健康診断の結果は医療機関から会社が健診結果を受領します。

②会社が従業員に対し、健康診断の結果を通知する

会社は医療機関から結果を受け取った後、その結果を従業員に通知します。

結果の通知と受領の流れは下の図の通りです。

上記の通り、会社は医療機関から結果を受領して従業員に通知するため、必然的に従業員の健診結果を知る事になります。冒頭でもお伝えした通り、健康診断は従業員が安全で健康に働ける健康状態かどうかの確認をするために実施するので、もしも結果が悪かった場合は『会社は結果が悪いことを知っていたのにもかかわらず、何もしていなかった』とみなされてしまいます。

そのため、精密検査や治療が必要な状態の項目がみられた場合は、会社は適切に対応しなければなりません。しかし、会社の担当者は医療の専門家ではないため、結果を見てもその結果が良いのか悪いのか、悪かったとしてもどの程度悪いのかが分かりません。そこで、医療の専門家である産業医等の医師に意見を求めることが必要とされているのです。

③従業員の健康診断の結果について、産業医等の医師からの意見を聴取する

健康診断の結果異常な所見が認められた場合、医師の意見を求めることが法律で定められています。常時50人以上の従業員が雇用されている会社では、選任された産業医が対応します。従業員が50人未満の会社では地域の産業保健総合支援センターで、医師の意見を無料で聴取する事が可能ですので、ご活用ください。

ところで、医師の意見とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けると、医師の意見は下記の3つに分けることができます。

上記3つの判定区分を決定することを、一般的に『就業判定』と呼びます。

ーよくあるご質問1:健康診断の結果を受領後、いつまでに医師の意見聴取を行えばよいでしょうか

厚生労働省のページには、3か月以内に意見聴取をするように書かれています。そのため、健康診断の結果を会社が受領してから、可能な限り早いタイミングで医師の意見聴取が実施できるようにスケジュール調整を行うとよいでしょう。

ーよくあるご質問2:健康診断の全ての結果について医師の意見聴取が必要なのでしょうか

法律で健康診断の実施が定められた項目である、『法定項目』のみに対して意見聴取をしていれば問題ありません。むしろ、会社が無条件に結果を受領・通知するべき項目は、この法定項目のみです。法定項目以外も会社が知るためには、本来従業員の個別の同意が必要となります。

そのため健康診断の事後措置においては、個別に開示の同意がとれていない限り、基本的には法定項目のみに対して実施します。

④医師から必要だと判断された従業員に対して、医療機関への受診勧奨等を行う

通常のオフィスワークに従事している場合は、就業判定の結果、いきなり就業制限や休業になるケースはそれほど多くはありません。しかし、健康診断の結果だけでは、安全に就業ができる状態か分かりません。そこで、就業判定を『保留』として、個別に従業員に対して対応を行うことがあります。例えば、医療職による面談を実施して通院状況や内服状況を確認したり、受診がまだできていない場合は、受診を勧めたりします。そこで会社は産業医の意見に従って、必要だと判断された従業員に対して、受診勧奨や受診結果の報告依頼を行います。

受診や面談の結果を確認してから、保留になった従業員に対して再度就業判定を行う、という流れが一般的です。

特殊な業務に従事している場合や、緊急度が高く命に直結するような健診結果であった場合は、まずは詳細の状況が確認できるまで要休業または就業制限とするケースも、十分に有り得ます。

ーよくあるご質問3:受診勧奨は会社の義務でしょうか

結論からお伝えすると、再検査や精密検査を受けるための受診勧奨は義務ではなく、『実施した方が望ましい』という努力義務とされています。そのため、受診勧奨や受診結果確認を行わなくても、その事だけが理由で罰則を受ける事はありません。

しかしここで忘れてはならないのが、会社には『従業員が安全に・健康に働けるように配慮をしなければならない』という安全配慮義務が課せられている点です。

もしも産業医が受診勧奨をするようにと意見を述べていたにもかかわらず、会社が従業員に何も伝えず、放置されていたとします。そこで、従業員が病気が原因で倒れて命を落としてしまったり、後遺症が残ったり等の重篤なケースが起こった場合、会社は『安全配慮義務違反』として責任が問われる可能性があるのです。

そのため、会社として医師の意見を尊重し、医師の意見を従業員に伝えて、受診ができるように配慮する必要があります。例えば平日忙しくて受診ができないといった従業員には、対象の従業員の上長と連携をとって業務を調整して有給休暇を取得できるようにする、といった配慮も含まれます。

ーよくあるご質問4:受診勧奨をする上で気を付ける事はありますか

例えば産業医からは受診結果を報告するように意見があったが、従業員が受診をしない場合は、担当者だけで抱え込まずに、まずは産業医に相談してださい。受診勧奨は書面やメールなど、いつ・何回実施したかが記録に残る形で実施する事が望ましいです。また、重症度の高い従業員には、早めに受診いただかないといけません。産業医から要受診勧奨の意見があったら、どの程度の重症度なのか、どの従業員から優先して対応するべきなのか、あわせて確認するとよいでしょう。

⑤指導区分の決定・就業上の措置を行う

先ほどもお伝えした通り、個別に産業医からの意見があった従業員から受診結果の報告があった場合、その報告をもとに、産業医が最終的な指導区分の決定を行います。重症度が高い場合や、従事している業務の特性上業務が当該従業員の健康状態に影響があると考えられる場合は、就業制限が必要となる場合があります。就業制限には、所定労働時間以外の労働時間を制限したり、夜間の業務を制限したり、負荷の高い作業を制限したりすることが例として挙げられます。

⑥労働基準監督署に健康診断を実施した旨を報告する

健康診断を実施した後は、労働基準監督署に所定様式の書類を提出します。定期健康診断は法律で1年に1回の実施が定められていますので、この用紙も前回から一年以内に提出するようにしてください。

まとめ

これまで健康診断事後措置におけるポイントを具体的にご説明してきましたが、そのなかでも特におさえておくべき要点は以下3点です。

・法律で定められた定期健康診断は、従業員が安全に働ける状態か確認するために、会社が実施するもの。健康診断の結果は会社が把握しているので、結果に応じた適切な事後措置対応を行わなければならない。

・異常な所見がみられた従業員に対しては、医師の意見を聴取する。医師の意見聴取は法律で定められている。

・精密検査や再検査への受診勧奨は努力義務であり、義務ではない。しかし会社の安全配慮義務を果たすためにも、医師の意見をもとに、適切に対応することが重要である。

健康診断の事後措置対応は、しっかりとやればやるほど、企業のご担当者様にとってはご負担に感じることもあるかもしれません。私たち産業医システムズでは、企業の担当者の方の負担を可能な限り軽減できるような、サービスをご提供することが可能です。ご関心のある方は、ぜひ弊社ホームページをご覧ください。

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