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産業医監修!ストレスチェックの実施におけるポイント集~前編~

産業医監修!ストレスチェックの実施におけるポイント集~前編~
絹川 千尋
監修者

日本産業衛生学会産業衛生専門医/日本医師会認定産業医/社会医学系指導

日本産業衛生学会指導医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医、メンタルヘルス法務主任者専属として勤務。その後中小企業を対象とした産業医として独立し、株式会社産業医システムズを設立。現在は統括産業医として、産業医に指導をしながら、チーム制による産業保健活動を行う。

はじめに

「初めてストレスチェックを実施するけれど、何をどこから勉強したら良いの?」「今までなんとなくストレスチェックをしてきたけど、このままで良いの?」企業の担当者様の中には、このような方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ストレスチェックの「いろは」を学習するためには、厚生労働省から展開されているストレスチェックの実施マニュアルがありますが、ボリュームも多く、やや難易度が高い内容であるため、普段通常業務が忙しいなかで、きちんとマニュアルを読んで内容を理解することはなかなか難しいという方も多いでしょう。

そのような皆さまのために、本記事ではストレスチェックの実施におけるポイント集として、厚生労働省のマニュアルの中から重要な点を抜粋して、押さえておくべき実務のポイントをご説明します。これからストレスチェックに向けての準備をすすめる方は、ぜひご一読ください。

産業医をお探しの方は産業医システムズへ!

産業医システムズでは、ストレスチェックに関する対応に精通した産業医が複数在籍しています。「ストレスチェック、どのように進めたら良いの?」「集団分析結果の活用方法が分からない」「職場環境改善のポイントは?」このようなお悩みをお持ちの企業の担当者様は、お気軽にご相談ください。また、常時雇用する従業員が50人未満の小規模の企業様は顧問医契約や高ストレス者に対する面接指導等のスポット対応も可能ですので、まずはご相談ください。

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1.ストレスチェックとは

1-1).会社に対し、実施することが法律で義務付けられている

ストレスチェックは労働安全衛生法第六十六条の十において、1年に1回以上、実施することが定められています。つまり、ストレスチェックを実施することは会社の義務であり、違反した場合は罰則が伴います。

1-2).ストレスチェックの実施対象となる会社の条件

ストレスチェックの実施が法律で定められている会社は、常時雇用する従業員【=継続して雇用し、常態として雇用している状態の従業員】が50人以上いる会社です。この中には、正社員以外のパート・アルバイト社員も含みます。例えば週1回しか出勤しないようなアルバイトやパート従業員であっても、継続して雇用し、常態として使用している場合であれば、50人のカウントに含める必要があります。

1-3).ストレスチェックの実施対象となる従業員の条件

ストレスチェックの実施義務がある会社は、常時雇用する従業員が50人以上の会社ですが、ストレスチェックの対象となる従業員は、以下①または②いずれかを満たすもの、と言われています。ストレスチェックの実施義務有無の基準とは異なりますので、注意しましょう。

① 期間の定めのない労働契約により使用される者であること。(契約期間が1年以上の者、1年以上の使用予定の者を含む

→正社員や、1年以上勤務する予定の有る契約社員が対象です。

週の所定労働時間数が、同種の業務に従事する通常労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

例えば、正社員の一週間あたりの所定労働時間が40時間だとしましょう。パートやアルバイトの従業員であっても、仕事の内容が正社員と同様の内容であれば、週の勤務時間が30時間を超えていれば、ストレスチェックの対象となります。

1-4).ストレスチェックを実施する目的

ストレスチェックの実施目的は、大きく分けて以下の2つがあります。

目的①:従業員自身のストレスへの気づきを促す

目的②:ストレスチェックの結果をもとに職場環境の改善を行う

目的①②が達成されることにより、ストレスによるメンタル関連疾患の発症を未然に防ぐこと、つまり一次予防(※)を目指しています。

(※1)一次予防…病気の発生を未然に防止すること

2.ストレスチェック全体の流れ

ストレスチェックについての理解を深めるためにも、ストレスチェックの全体的な流れを見てみましょう。ストレスチェックの流れをまとめると、以下の図のような流れになります。本記事では、ストレスチェックの実施に至るまでの準備期間に行うことや、ストレスチェックの基本的な考え方について、詳しくご説明しています。以降の流れは続編で解説予定ですので、ご関心のある方はぜひ続編もお読みください。なお、図の最後にある点線で囲まれている「集団分析の実施」は努力義務になります。集団分析は実施しなかった場合でも罰則が課されることはありませんが、多くの会社が集団分析を実施することで、職場環境改善のための情報の一つとして活用しています。

3.ストレスチェックの実施体制

ストレスチェックを実施する上で、会社側には大きく分けて3つの役割が必要とされています。

【実施者】

ストレスチェックの企画と結果の評価に関与する「実施者」という役割があります。以下の資格を持つ人物のみが実施者となることができます。

医師(産業医が選任されている場合は、産業医が実施者になることが多い)

保健師

・一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士等

【実施事務従事者】

ストレスチェックの実務を担当するキーパーソンです。ストレスチェックの実施や集団分析のための作業、受検の勧奨、面接指導の勧奨等の実務を担当します。従業員の回答結果を直接確認する作業を伴うため、従業員が安心して本音で回答ができるよう、人事権を持つ人は実施事務従事者になることができませんので注意しましょう。実務上人事権を持つ人であれば、部署や肩書にかかわらず、実施事務従事者になることができません。逆を言えば、人事権を持たなければ、人事部の担当者でも実施事務従事者になることができます。

【担当者】

ストレスチェックの実施計画の策定や、従業員への通知、ストレスチェック受検の勧奨等を行います。従業員の回答結果を直接確認することはありませんので、人事権を持つ人も担当者になることができます。(ストレスチェックの回答有無を確認することは、回答内容では無いので問題ありません。)

上記を踏まえて、従業員が安心してストレスチェックを受けられるような体制を検討してみましょう。

4.衛生委員会等での審議

厚生労働省のマニュアルでは、ストレスチェックを実施するにあたって、以下の内容を衛生委員会で審議を行うことが必要であるとされています。項目は全部で11項目ありますが、本記事ではポイントだけを絞ってご説明しますので、詳しい内容についてご関心のある方は厚生労働省のストレスチェック実施マニュアルをご確認ください。

① ストレスチェック制度の目的に係る周知方法 

■ポイント:実施の目的はあくまで一次予防(病気発生の未然防止)であり、メンタル不調者の早期発見が一義的な目的ではないことを周知する点がポイントです。

②ストレスチェック制度の実施体制

■ポイント:実施者、実施事務従事者、担当者を明確にすることです。ストレスチェック業務を委託する場合は、委託先の中での実施者、実施事務従事者等の役割を明確にするようにしてください。

③ストレスチェック制度の実施方法

■ポイント:ストレスチェックで使用する調査票は何か、高ストレス判定の基準はどのように設定するのかについて審議します。また、高ストレスと判定された従業員がどのように医師の面接指導を申し込むのか、安心して面接指導の申し込みができる状態なのか、確認が必要です。

④ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法 

■ポイント:集団分析を行う際は、個人が特定されないようにすることが大切です。集団分析の対象が10人を下回る場合は、全従業員の同意を取得しない限り、会社に分析の結果を提供してはならないとされていますが、個人の特定につながり得ない方法で実施する場合は、10人未満の単位での集計・分析を行うことも可能です。そのため何人以上の集団で集団分析を行うか、衛生委員会等で審議をする必要があります。

 ⑤ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い 

■ポイント:ストレスチェックの受検の有無の情報や、受検を勧奨する方法を予め明確にしておく必要があります。

⑥ストレスチェック結果の記録の保存方法 

■ポイント:ストレスチェックの結果は大切な個人情報です。保存場所や保管方法等をしっかりと明確にし、従業員が安心してストレスチェックを受検できるよう配慮しましょう。

⑦ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法

⑧ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、 訂正、追加及び削除の方法 

■ポイント:ストレスチェックの結果や医師からの面接指導の結果を扱う上では個人情報が含まれます。また、個人が特定されない場合であっても集団分析の結果も「誰でも構わず開示してよい」とは言えません。そのため、それぞれの開示範囲や開示目的を明確にし、その範囲のなかで情報を活用していくことが求められます。

⑨ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱 いに関する苦情の処理方法

ポイント:ストレスチェックを外部に委託したことに伴い、苦情の処理窓口が外部機関となる場合は、委託先の担当者が会社内の担当者と連携して対応することが望ましいです。

⑩労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること 

■ポイント:多くの従業員にストレスチェックを受けてもらうことで、より実態を反映した結果が得られたり、多くの従業員にストレスへの気づきを与えたりすることができますが、従業員にはストレスチェックを受検しない権利があります。会社は受検を強制することはできませんので、注意が必要です。

⑪労働者に対する不利益な取扱いの防止 

■ポイント:ストレスチェックを実施する過程において、従業員が不利益を被ることのないよう、充分に配慮した体制を整えること、そしてその体制が整っていることをどのような形で従業員に周知するか、検討する必要があります。

5.社内におけるストレスチェックに関連する規程の策定と従業員への通知

厚生労働省の実施マニュアルでは、「ストレスチェックの実施に際して衛生委員会での調査・審議後、ストレスチェックに関する社内規程を定めて従業員に周知する」とされています。これから社内規程を策定される方は、厚生労働省実施マニュアルに規程の例が示されていますので、本マニュアルに沿って策定することができるとよいでしょう。産業医が選任されている場合は、産業医に相談してみることも一つの方法です。

最後に~ストレスチェックは、弊社にお任せください~

ストレスチェックの回答内容や結果は非常にセンシティブな内容であるため、従業員が安心して本音で回答できるよう、活用方法や取り扱いには充分に注意することが必要です。

ストレスチェックを実施するにあたっては、「この情報は誰が扱ってもよいのか」「どこまで開示したらよいのか」常に注意をしながら進めていきましょう。外部にストレスチェックの実施を委託している場合は、外部の担当者と密に連携を取りながら進めていくことが大切です。

本記事ではストレスチェックの実施における考え方や、ストレスチェックの実施前の準備期間に行うべきことについて解説してきました。

本記事の続編では、ストレスチェックの実施から、集団分析に至るまで、ストレスチェックにかかわる有益な情報をお届けする予定です。

ストレスチェックについては注意して行うべきことも多く、普段から忙しい企業の担当者様だけでは、なかなか対応に手が回らないことも多いのではないでしょうか。産業医システムズでは、産業医や保健師が企業の担当者様に伴走する形で、ストレスチェックのサポートを行います。また、独自のシステムを使用して、Webで結果の一元管理や医師による面接指導の勧奨まで簡単に行うことができます。

現在のストレスチェックにお困りの方、ご関心のある方はぜひお問合せください。

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