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産業医監修!職場巡視のポイント

絹川 千尋
監修者

日本産業衛生学会産業衛生専門医/日本医師会認定産業医/社会医学系指導

日本産業衛生学会指導医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医、メンタルヘルス法務主任者専属として勤務。その後中小企業を対象とした産業医として独立し、株式会社産業医システムズを設立。現在は統括産業医として、産業医に指導をしながら、チーム制による産業保健活動を行う。

常時雇用する従業員が50人以上の会社では、産業医を選任することが労働安全衛生法で定められています。本記事のテーマは、産業医の重要な職務のひとつである「職場巡視」についてです。

産業医の職務

産業医の職務には様々なものがありますが、具体的な職務内容を大きく分けると、以下の7つに分類されます。

① 健康診断結果の確認と事後措置

② 長時間労働者に対する面接指導

③ 法定のストレスチェックの実施と高ストレス者への面接指導

④ 衛生委員会への出席

⑤ 健康教育

⑥ 休復職者や体調不良者へに対する面談や健康相談

⑦ 職場巡視

このように、産業医の主な職務内容のひとつに職場巡視があります。職場巡視とは何を目的に行うのでしょうか?職場巡視をする上で、会社としておさえておきたいポイントにはどのようなものがあるのでしょうか?本記事で詳しくご説明します。

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職場巡視とは

はじめに、職場巡視とは何でしょうか。職場巡視は労働安全衛生規則によって実施することが定められており、常時雇用する従業員が50人以上の会社で実施が義務付けられています。職場を巡視、つまり従業員が実際に働いている職場を見てまわることです。

職場巡視については、労働安全衛生規則によって以下の通り定められています。

■労働安全衛生規則 e-Gov法令検索より抜粋

第十一条 衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果二 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であつて、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

職場巡視の目的

職場巡視の目的は従業員の安全と健康を守るため、『作業方法や作業環境が適切であるかを確認し、事故や病気が発生しないように改善を行う』ことです。

職場巡視を適切に行わなければ、労働災害などが発生する可能性が高まり、会社や従業員双方にとって大きな損害となるような事故が生じてしまう恐れがあります。実際に労働災害が発生した場合は会社は責任を問われることになります。なお、職場巡視を適切に実施しなかった場合は、法律違反となりますので、50万円以下の罰金を科せられることもあります。

職場巡視の実施者

職場巡視は産業医と衛生管理者の両方によって行われます。あわせて先にご覧いただいた2つの条文をおさらいしてみましょう。第十一条では「衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視する」と明記されており、第十五条では「産業医は、少なくとも毎月一回(または一定の条件を満たせば二月に一回)作業場等を巡視する」と記載されています。

職場巡視の頻度・タイミング

職場巡視は、従業員の労働者が実際に働いている状況を確認できる、産業医の職務のなかでも重要な職務のひとつです。

一方で、昨今メンタル不調者をはじめとする体調不良者や過重労働による体調不良者が増加傾向にあり、産業医が対応しなければならないことが増えているといった状況があります。しかし、多くの会社では産業医の来社日は月に1回から数回であることが多いため、産業医は限られた時間のなかで、職務を遂行する必要があります。

そこで、職場巡視をほかの産業医の職務から切り離して実施するのではなく、産業医のほかの職務と関連づけてより効果的に・効率的に行うことが求められるようになりました。

平成29年に職場巡視にかかわる法律の改正が行われ事業者から産業医に所定の情報(次の章でご説明します)が毎月提供される場合には、産業医の作業場の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることが可能となりました。

これは決して、職場巡視を行う重要性が低下したというものではありません。従業員の安全・健康の管理の重要度が増し産業医だけで全ての管理が難しくなってきているため、会社の衛生管理者が積極的に従業員の健康管理・増進にかかわる情報収集をしていくことで、産業医と衛生管理者が両輪となって、従業員の健康の保持・増進を目指すことが目的です。

なお、今まで毎月行っていた職場巡視のタイミングを2か月に1回に変更する場合、衛生委員会等で調査・審議を行ってから変更する必要があります。

会社から産業医に毎月提供する情報の内容

先にお伝えした通り、産業医の作業場の巡視の頻度を、毎月1回から隔月にすることが可能となりました。ここでは産業医へ毎月提供するべき情報についてご紹介します。所定の情報には、以下の1~3の3つがあります。

1.衛生管理者が少なくとも毎週1回行う職場巡視の結果

具体的には、以下の内容を産業医に報告します。

・巡視を行った衛生管理者の氏名

・巡視の日時と巡視した場所 

・ 巡視を行った衛生管理者が「設備や作業方法、衛生状態に有害のおそれがある」と判断した場合、その内容と講じた措置の内容 

・そのほか労働衛生対策の推進にとって参考となるようなことがあれば、その内容

2.1の内容のほか、衛生委員会等での審議を経て、事業者が産業医に提供することに決定されたものがあれば、その内容

3.休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合、その超えた時間が1か月当たり100時間を超えた労働者の氏名と、超えた時間に関する情報

職場巡視で確認するべき内容

これまで職場巡視を行う上での重要な考え方についてご説明してきましたが、実際に職場巡視で見るべき内容はどのようなものでしょうか。皆さんの仕事の内容・仕事の場所は非常に多岐にわたるため「これを確認しておけばよい」という絶対的なものはありません。

産業医は様々な会社での職場巡視の経験がありますので、わからないときは悩まずに産業医に確認するのがおすすめです。

また、会社として巡視して欲しい点をチェックリストにまとめることも有用です。

チェックリストを作成する上で参考になるものとして、厚生労働省が公表している安全衛生巡回チェックポイント事務所衛生基準規則があります。

この二つを参考に、ご自身の会社や職場にふさわしいチェックリストを産業医と会社で協議しながら検討するようにしてください。

ここではオフィスを例として、一般的に確認した方がよいとされる項目をご紹介します。以下はあくまで一例に過ぎませんので、参考情報のひとつとしてお役立てください。

■ 温度・湿度・照度

■ 快適な職場環境か(仮眠室を含む休憩スペース、お手洗いや洗面所、更衣室など)

■ 受動喫煙防止対策がされているか(全面禁煙か空間分煙か、空間分煙の場合は)

■ 衛生面に問題はないか(作業スペースの清潔さ、冷蔵庫やゴミ箱の使用状況など)

■ 転倒のリスクはないか(足元にコード類などのつまずきやすいものはないか)

■ 作業姿勢に無理はないか(PC作業をする上で無理のない姿勢でできているか)

■ 感染症対策(季節や流行に応じて適切な感染症対策がとれているか)

■ 安全・防災対策がされているか

(高い場所に段ボールがつみあがっていないか、家具は固定されているか、消火器やAEDの設置場所など)

職場巡視の結果保存

せっかく適切に職場巡視を行っていても、記録がなければ第三者に職場巡視を行ったことをみせることができません。職場巡視の実施後は、その結果と改善が必要と判断された事項、改善した結果等をしっかりと記録で保管するようにしましょう。毎月の衛生委員会等で職場巡視の結果や改善事項等を共有することも効果的です。

衛生管理者による職場巡視の大切さ

産業医は月に1回、または2月に1回職場巡視を行いますが、衛生管理者は週に1回職場巡視を行います。会社に常駐している専属産業医を除き、産業医は月に数回しか職場に顔を出しませんが、衛生管理者はより社員との距離が近く、現場の実態を把握していることが多いといったメリットがあります。職場巡視をしているなかで従業員とコミュニケーションをとる機会もあるでしょう。場合によっては相談を受けることがあるかもしれません。衛生管理者はより身近な存在として、従業員と産業医との橋渡しとなるような役割が期待されます。

まとめ

本記事では、職場巡視について押さえておくべきポイントについてご説明してきました。

最後に改めて、特に重要なポイントに絞って本記事のまとめをお伝えします。

・職場巡視は法律で定められた産業医と衛生管理者の職務であり、従業員の安全と健康を守るために、作業方法や作業環境が適切であるかを確認し、事故や病気が発生しないように改善を行う。

衛生管理者は週に1回職場巡視を行い、産業医は1月に1回、一定の条件を満たせば2月に1回巡視を行う。

・職場巡視において衛生管理者の果たす役割は大きく、衛生管理者と産業医が両輪となって従業員の健康保持・増進を支援していくことが大切である。

・職場巡視で確認するべき項目は厚生労働省が公表している安全衛生巡回チェックポイントや事務所衛生基準規則が参考となるが、実際働く職場で起こり得るリスクに応じて、チェックリストを検討することが望ましい。

以上職場巡視における要点についてお伝えしましたが、職場巡視だけにとどまらず、冒頭でご紹介した通り、産業医の職務は多岐にわたります。それだけ産業医に求められる役割は大きく、産業医の選任は企業様にとって重要な決断になるのではないでしょうか。
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