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産業医変更の手続き方法とは?メリットや選び方、探し方も解説

産業医変更の手続き方法とは?メリットや選び方、探し方も解説
絹川 千尋
監修者

日本産業衛生学会産業衛生専門医/日本医師会認定産業医/社会医学系指導

日本産業衛生学会指導医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医、メンタルヘルス法務主任者専属として勤務。その後中小企業を対象とした産業医として独立し、株式会社産業医システムズを設立。現在は統括産業医として、産業医に指導をしながら、チーム制による産業保健活動を行う。

産業医変更の手続き方法は?

1.前任者の解任から14日以内に新任者を選任する

産業医の選任義務が発生した日から14日以内に選任する必要があります。(労働安全衛生法第13条第1項) 前任者が辞任し、新しい産業医を選任する場合も同様に、解任した日から14日以内に届け出ましょう。

産業医選任の義務があるにも関わらず、産業医の不在期間の発生は避け、所轄の労働基準監督署へ産業医選任届を遅延なく届け出る必要があります。やむを得ず期日内に産業医を選任できそうにない、産業医選任届の提出が遅れてしまう場合には、あらかじめ所轄の労働基準監督署に伝えておきましょう。

2.「産業医選任報告書」など必要な書類を用意する

産業医の変更手続きの際には、下記の書類が必要です。また、医師であれば誰でも良いわけではなく、医師会の指定する研修会を修了するなどの要件が必要です。

  • 産業医選任報告書
  • 医師免許証の写し
  • 産業医研修の修了証の写し

産業医選任報告書は、労働基準監督署で取得する、もしくは厚生労働省のホームページからダウンロードすることが可能です。書式は、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者の選任報告と同じものを使用します。

【産業医選任報告様式】総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告(厚生労働省)

3.労働基準監督署に届け出る

「産業医選任報告書」の届出の方法は下記の方法があります。

  1. 所轄の労働基準監督署の窓口へ直接提出
  2. 郵送で届け出る

下記の様式をダウンロードし、事前に記入し提出します。

総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告(厚生労働省)

・e-Gov電子申請

e-Gov電子申請とは、紙で行われている届出をインターネット上で行えるものです。現在は電子申請と紙での申請の2種ですが、一部が2025年1月より電子申請での報告が義務化される予定です。24時間申請でき、労働基準監督署の窓口に出向く必要がないため、時間を有効活用できます。

労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化(厚生労働省)

【電子申請】労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス(厚生労働省

4.安全衛生委員会に報告する

産業医を解任・変更した際、事業者はその事実と理由を1ヶ月以内に安全衛生委員会に報告するよう、労働安全衛生法第13条第4項に定められています。安全衛生委員会を活用し産業医の紹介、産業医職務の理解を得る機会としましょう。

産業医変更が認められないケースも

基本的に産業医の変更はいつでも可能ですが、変更が認められないケースも存在します。産業医の職務は労働者の健康を守ることであり、利益を求める企業の意見に反する助言を出す場合もありますが、それを理由に交代や解任はできません。

労働安全衛生規則において下記のとおり定められています。

事業者は、産業医が法第13条第5項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(労働安全衛生規則第14条)

また、産業医を変更したくてもすぐに手続きができないケースも少なくありません。産業医本人が辞任を拒否する、産業医を紹介してくれた人との付き合いがこじれそう、などの状態では産業医の交代に時間がかかります。加えて、契約上の理由で急に産業医を変えられない場合もあります。

このように産業医を変更できない場合は、2人目の産業医の選任を検討してもよいでしょう。2名体制にすることで、業務を分担したり補い合ったりできるというメリットがあります。費用面で2人の産業医を同時に選任するのが難しい場合は、嘱託産業医やスポット契約などを活用して2人目の産業医を選任するのも手段の一つです。

企業が産業医を変更したいと思う6つの理由

産業医が自社について把握していない

従業員の健康と安全の確保や健康経営の推進には、産業医が事業場の状況や課題を正確に理解する必要があります。自社を正しく理解が出来ていないと、効果的な産業保健活動を展開していくことは難しいでしょう。産業医と自社について話し合いの機会を持つことも良いでしょう。

うまくコミュニケーションが取れない

産業医が効果的に職場の安全向上を進めるためには、周囲とのコミュニケーションや柔軟に対応していく姿勢が必要不可欠です。

産業医にやる気が感じられなかったり、人の話を聴かない、ハラスメントや高圧的な態度をとるなどコミュニケーションに問題があれば、従業員とも企業とも信頼関係が築けません。

面接指導時にあまり話を聞いてくれなかったという訴えや、ハラスメント的な強い語気・上から目線で対応されたという訴えが複数の従業員から寄せられた場合は、産業医に事実確認をして、必要に応じて改善を促すと良いでしょう。産業医は、メンタルヘルス不調に伴う休職者・復職者の面談を行なうこともありコミュニケーション力が重視されます。

産業医が高い専門スキルを持っていても、コミュニケーションがスムーズに取れなければ、従業員の健康と安全が十分に確保できないリスクがあります。

産業医が面接指導を行わない

産業医の面接指導には、長時間労働者や高ストレス者への面談、健康診断の事後措置における産業医面談などがあります。個々の従業員への産業医の丁寧な面接指導が企業の健康経営につながることはいうまでもありません。

診療における医師の診察と、企業における産業医の面談では目的が異なります。企業と従業員の間で中立な立場で意見を述べるのが産業医です。面接指導に応じてくれない場合は産業医の変更を検討してよいでしょう。

産業医がストレスチェックの実施者を務めてくれない

労働者50名以上の事業所は、労働者に対しストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックを行う人は、労働安全衛生法に定められた実施者のみです。実施者には、医師・保健師・厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師または精神保健福祉士などが該当しますが、事業場で選任している産業医がストレスチェック実施者となるのが一般的です。

しかし、ストレスチェックの実施を拒否する産業医も存在します。理由として、ストレスチェック制度の実施者には「判断の責任を問われるリスク」があります。たとえば、高ストレス者の選定基準は超えていたのに面接指導は必要ないと判断された労働者にメンタルヘルス不調を理由に労災の訴訟を起こされたケースなどが考えられます。ストレスチェックの結果において何か問題があった場合は、基本的に「実施者」が責任をとることになります。

企業がストレスチェックを実施していないことがわかった場合の罰則はありませんが、労働基準監督署への報告がない場合は最大50万円の罰則金を支払わなければなりません。(労働安全衛生法 第120条)安全配慮義務違反とならないよう、産業医にストレスチェック実施者として務めてもらう必要があります。

健康診断後の対応をしてくれない

健康診断実施後の企業の義務として、健康診断結果の確認、産業医からの意見の聴取があります。産業医は健康診断結果を基に就業上の措置の決定(通常勤務、就業制限、要休業)行います。働けないような健康状態の従業員を働かせて、健康が害された場合、会社の安全配慮義務が問われます。また、努力義務ではありますが、異常所見のある従業員に対しては医療機関への受診勧奨や保健指導が推奨されています。従業員が病気にかかることなく、長く健康に働くために積極的に事後措置を行うことが重要です。ています。

積極的に改善提案してくれない

必要最低限な業務しかせずに、名義貸し状態の産業医も存在します。自社への積極的な改善提案を求めているにもかかわらず、言われたことだけを淡々と果たすような産業医では、自社の方針・目的に敵いません。

企業が産業医に求めるスタンスに応じてもらえない場合も産業医変更を検討する原因となります。

産業医変更のメリットとデメリット

産業医変更のメリット

コストや時間が掛かるため、産業医の変更を躊躇する人事労務担当者もいるのではないでしょうか。

自社に適した産業医に変更するメリットとして、産業医における専門性の高い知識や経験、判断能力を活用し、自社の社員の健康保持増進や健康経営へ効果的につなげることが期待できます。長く関わっていく可能性のある産業医なので、自社のスタンスに合った産業医を選ぶことが大切です。

 産業医変更のデメリットと対処法

任期が残っている状態でも、産業医の変更は可能です。企業との相性がよくない産業医を雇い続けると従業員の健康保持や企業の健康経営推進のためにならないなど、不幸な結果を招きかねません。

諸事情ですぐに産業医を変更できない場合は、2人目の産業医の選任を検討してもよいでしょう。ただし、新任の産業医と契約すると元々契約していた産業医から不満を訴えられる可能性も考えられます。また、2名の産業医を雇えばその分の費用が必要ですが、2名体制にすることで、業務を分担したり補い合ったりできるというメリットがあります。費用面で2人の産業医を同時に選任するのが難しい場合は、嘱託産業医やスポット契約などを活用して2人目の産業医を選任するのも一つの方法です。

産業医を変更するための選び方のポイント

産業衛生の専門性があるか

産業医とは、従業員の安全や健康を守るための専門医師であり、専門的立場から指導や助言する役割があります。産業医は、医師免許に加えて、産業医学の専門知識について一定の要件を満たしていることが必要です。国の指定する研修を修了したり、「労働衛生コンサルタント」の資格を有したりしている医師を指します。

しかし、現場に即した判断をしたりするには経験が必要です。産業医の専門医認定機関である「産業衛生学会」や「社会医学系専門医」が認める専門医や指導医を持つ先生であれば一定の経験と知識を持っているため、産業医選任の際には参考にするとよいでしょう。

積極的な提案をしてくれるか

自社の健康課題を適切に理解し、自社では気づかないような課題をみつけ、積極的な提案をしてくれる産業医と協力することで、従業員の健康と安全を確保し、企業の健康経営の推進が期待できます。従業員が生き生きと働くことは企業の活性化に繋がります。自社の課題について産業医に伝え、こまめに相談・連携していきましょう。

面談のスキル

産業医の職務では、長時間労働者面談や休職者や復職者の面談、メンタルヘルス不調者の面談等、従業員との面談が基本となります。積極的に面談を行なう機会を設け、産業医を最大限に活用しましょう。スキルをもった産業医には、従業員も相談がしやすいため、円滑な就業措置を検討することが可能となります。また、上司や人事をはじめとする関係者とのコミュニケーション力があるかも重視なポイントです。対象者や関係者から十分な情報を引き出す能力や相談内容を踏まえて柔軟に対応する能力があるかを確認するようにします。会話が一方的でないか、高圧的でないかも確認しておきましょう。

また、産業医は中立的な立場です。企業と産業医が結託して復職可能な労働者を退職に追い込むような行為はあってはなりません。逆に、過剰に労働者に肩入れする産業医にも注意が必要です。

健康経営や労務改善の提案ができるか

健康経営の実現には、専門知識をもった産業医との連携が欠かせません。互いにうまくコミュニケーションをとりながら、事業場の課題を解決することが重要です。。法律で最低限必要とされる業務だけではなく、事業場の課題に合わせた職務を行うことが出来る産業医を選ぶことが重要です。

自社に最適な産業医の探し方

相性がよい

事業場の特徴や健康課題、ニーズを明確にし、自社に最適な産業医を選任することが大切です。産業医紹介サービスでは、どの程度の経験・知識を持っている医師が紹介されるのか分からず、選任後にミスマッチだった際でも交代が困難な場合があります。産業医システムズでは、従業員人数や体制・社風・ご要望に合わせて産業医を選定し、ご紹介いたします。産業医と相性が合わないと感じた際には、無料で変更することも可能です。

産業保健師などチーム体制でサポートしてくれる

産業保健師を設置することで、産業医は、面談や事業改善の提案など、緊急性のある業務や専門的な業務に集中する事が可能となり、業務の効率化が期待できます。また、産業医業務時間の短縮となり費用の節約にもつながります。さらに、保健師は産業医と連携しながら病気や職場内での怪我の予防やケアを行うため、産業医一人が担当するよりも、よりきめ細やかな健康管理体制が確立できます。

産業保健に関わるメンバーがお互いの役割を理解し、それぞれの専門性を活かしながら連携していくことが重要です。

産業医変更をお考えの方は産業医システムズへ!

産業医は労働者の健康管理において重要な役割を担うため、企業と合わない産業医を選任し続けていると、労働者の健康が損なわれ、企業にも悪影響が発生します。それだけでなく、産業医が法令を遵守した職務を実施していなかった場合、罰せられるのは企業であり、速やかな産業医の変更を検討する必要があります。

産業医システムズでは、全国に500名しかいない産業医の専門医である産業衛生学会指導医をもつ統括産業医が業務を統括しています。余力のある企業、少ない予算で最大限できることをしたい企業、健康経営をすすめたい企業、企業のニーズによって活動は異なります。大企業から中小企業まで10年以上の勤務経験を持つ統括が企業の特徴に合わせて提案をします。、当社は統括産業医と訪問産業医と保健師によるチーム体制で企業の対応を行っており、定期的に検討会を開いたり、カンファレンスを開いたりすることで、医師の独りよがりな判断にならないように、業務レベルの均質化をしています。自社にマッチする産業医をお探しの際は、ぜひ、産業医システムズをご検討ください。

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